「角層のすみずみまで浸透する」「角層のうるおいを保つ」……など化粧品の宣伝や記事で目にする角層という言葉。
角層とはそもそも何か、みなさんはどこまでイメージできますか?
化粧品を選ぶ大前提として、肌の構造やしくみについて学んでおくと、よりスキンケアのイメージがつきやすくなります。
この記事では、皮膚の構造について簡単に理解できるよう解説していきます。
肌の構造
私たちの肌は、外側から表皮、真皮、皮下組織からなります。
それぞれ役割があり、美容分野においての役割は以下の図のようになります。

肌の1番外側である表皮は、水分保持とバリア機能を、その奥の真皮ではハリや弾力を維持し、1番下の皮下組織で表皮、真皮を支える構図となっています。
化粧品成分のほとんどは、表皮の角層までしか浸透できませんが、1部の成分では真皮での効果が確認されています。
表皮のしくみ
表皮は厚さ0.2ミリと非常に薄い層です。角層~基底層までの層に分かれていますが、それぞれの層が独立して働いているのではなく、ターンオーバーという流れでチームワークを形成しています。

ターンオーバーとは、基底層で新しい細胞が作られ、表面の角層へ押し上げられていき、最終的には垢となって剥がれ落ちるまでの流れを意味します。

ターンオーバーのおかげで、肌の細胞は常に生まれ変わっているのね!
ちなみに、基底層で作られた細胞が角層に上がってくるまで約4週間、垢となって剥がれ落ちるまでは、さらに2週間かかると言われています。
角層の役割
表皮は、外部からの異物の侵入を防ぐ(バリア機能)、肌内部の水分保持という2つの役割を担っていますが、中心となって活躍しているのが肌の最も外側である角層です。
以下に角層の簡易図を示します。

角層の構造を学ぶ上で重要なキーワードが、NMF(天然保湿因子)、細胞間脂質です。
・NMF(天然保湿因子)……角層細胞の中で、水分を抱え込む役割を担う
・細胞間脂質(主にセラミド)……角層細胞同士をつなぐ土台
角層は、角層細胞が積み重なるように並んでおり、細胞間脂質が角層細胞同士をつなぎ合わせています。
つまり、角層細胞で水分を保持し、細胞間脂質という土台で支える、両者のバランスが保たれることで角層の状態が整い、バリア機能や水分保持につながるのです。

NMFや細胞間脂質が不足すると、お肌が乾燥したり、バリア機能が弱まるってことね
基底層の役割
表皮におけるバリア機能において、もう1つ知っておきたいのが、紫外線から細胞を守る役割です。
私たちの肌は、紫外線を浴びると黒く日焼けしたり、シミができたりしますよね。
見た目上良い変化とは言えませんが、強い紫外線はときに肌の細胞DNAを傷つけるため、私たちの肌はメラニンと呼ばれる黒い色素をつくり、紫外線から肌を守っています。
メラニンは、表皮の基底層にあるメラノサイトと呼ばれる細胞で作られ、ターンオーバーと共に皮膚から剥がれていきます。

紫外線を大量に浴び、メラニンが過剰に作られる、あるいはターンオーバーの乱れでメラニンがうまく排泄できなくなると、シミとなって私たちの肌に現れます。

シミや日焼けは嫌だけど、紫外線から肌を守ろうとした結果なのね
真皮のしくみ
表皮の約10倍の厚さ(約2ミリ)があり、皮膚のハリや弾力維持に関わっています。
主役となる成分が、コラーゲン、エラスチンと呼ばれるたんぱく質でできた繊維です。
ストレッチ素材の洋服を思い浮かべて下さい。
洋服の主役となるコラーゲン繊維に、伸び縮みできるエラスチンという繊維を少量混ぜて、伸縮性のある洋服が出来上がる、真皮はそんなイメージでできています。
また、ヒアルロン酸という水分保持能力をもった基質が、繊維の間を埋め、真皮層のうるおいを保っています。
ちょっと難しい言葉ですが、線維芽細胞(せんいがさいぼう)は、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を生みだしている細胞です。
以下に真皮層のイメージ図を載せました。

ちなみに、紫外線や加齢により、コラーゲンやエラスチンは変性、減少すると言われています。

コラーゲンやエラスチンが減ると、たるみやシワにつながるってことね
まとめ
皮膚の構造が理解できていると、自分の肌の状態をイメージし、肌荒れやシミ、シワの原因を追究しやすくなります。
また、自分が使っている化粧品が、肌のどこに、どういったアプローチをしているのか、理解できるとスキンケアのモチベーションが上がります。
ぜひ、この記事で肌の構造をイメージして頂き、今後のスキンケアをより一層楽しんでいただけると幸いです。
参考文献
高橋 康之>保湿化粧品とその作用>日本香粧品学会誌>2018年42巻4号>p280-282
浅野 新, 鈴木 正, 尾股 定夫>皮膚の力学的特性とその測定法>日本バイオレオロジー学会誌>1992年6巻3号>p17~18
楊 一幸>シワ形成メカニズムと抗シワ製品>日本香粧品学会誌>2019年43巻2号>p113~115